イラク再建はイラク国民の手で
「イラク特措法」に反対する決議


 アメリカ、イギリスがイラクへの武力攻撃をはじめてから四ヶ月弱、戦闘の終了宣言から二ヶ月が経過しました。米・英軍のイラク占領が続いています。イラク国内では、いまだに小さな戦闘が続き、米・英の兵士が死傷しています。フセイン大統領の像を米軍が引き倒し、それを取り囲む市民が喜んでいる姿がテレビで報道されました。そしてまもなく、多くの市民が米・英軍の引き上げを要求する映像が伝えられました。
 さらに、イラク戦争の最大の理由であった大量破壊兵器は、いまだに見つかっていません。アメリカでは、大量破壊兵器をイラクが持っていたという証拠がないことが明らかになっています。ブッシュ大統領は、一般教書演説で「フセイン政権がアフリカからウランを入手しようとした」と主張しましたが、その証拠とした文書は偽物であることを政府が認めました。イギリスでは、イラクが国連査察団を妨害したと主張する文書は、大学院生の論文の盗用であったと、政府が認めました。
 かつて、侵略戦争はいつでも「偽りの理由」をつけてはじまりました。米・英軍のイラク攻撃は、安保理決議がないままの戦争であるとともに、侵略戦争そのものです。さらに、ブッシュ大統領は、軍事占領は長期化するとしています。
 アメリカは、イラク戦争を「イラクの自由作戦」と名づけ、フセイン政権の打倒が目的の一つであるとしていました。これもまた「各国の自決の原則」、「加盟国の主権平等」、「内政の不干渉」など、国連憲章の定める原則にことごとく違反するものです。まったく正当化できるものではありません。
 戦闘終了宣言後にだされた安保理決議一四八三号は、「イラクの主権と領土保全を再確認し」「イラク人が自らを統治する日が早急にこなければならない」としています。アメリカ、イギリスの軍事占領は、この決議にも違反しています。
 米・英軍のイラク戦争、そして軍事占領は、二重三重に国際的合意を無視したものです。このような戦争、軍事占領に対して、日本政府は、戦争をまっさきに認め、「イラク特措法」を成立させようとしています。
 「イラク特措法」は、米・英軍が続けるイラク軍事占領に対して、日本の自衛隊が支援活動を行うためのものです。いまだに小規模ながら戦闘があります。いままでの自衛隊海外派遣法であるPKO法や周辺事態法が想定している「危険」をはるかに越える危険な地域がイラクにはあります。軍事占領が続いている地上で、占領の支援に加わることは、戦闘に直面することです。PKOのように、受け入れを了承している事態とはまったく異なります。
 さらに、「イラク特措法」は、自衛隊員だけの派遣ではありません。公務員や民間人を募集することになっています。自衛隊員以外の人が戦闘に巻き込まれることもありうることです。
 日本政府は、PKO法、周辺事態法、テロ対策特措法、有事法制と憲法に対立するともいえる法律を次々に成立させています。こうしたなかで、有事法制や周辺事態法を発動させない取り組み、憲法を守り発展させる取り組みを進めていく必要があります。
 七月四日、政府は「イラク特措法」を衆議院で強行可決し、参議院に送りました。政府は、「テロ特措法」の継続については見送ったものの、国会の会期延長をして、「イラク特措法」の成立を狙っています。私たちは、この事態のなかで次のことに奮闘します。

一、「イラク特措法」の成立を阻止するために奮闘します。
一、周辺事態法、有事法制を発動させないために、機敏にとりくみます。
一、国際的合意、国際的な平和への努力を学びあいます。
一、児童・生徒たちに憲法の平和原則を学習させ、確信にさせます。
一、高校生に国連の平和的原則などを学習させ、確信にさせます。

右決議します。
二〇〇三年七月十二日
埼玉県高等学校教職員組合第4回分会代表者会議