【特別決議】
自衛隊のイラク派兵を許さない、平和憲法を守れ


 1941年12月8日、日本は、真珠湾を攻撃し、アメリカとの戦争を始めました。その62年後の今年、12月9日、小泉首相は、戦後初めて、戦争をしている国に軍隊を派遣するという、イラク特措法に基づく「基本計画」を閣議決定しました。さらに近日中に、基本計画に従って自衛隊が「実施要項」を決定するとしています。「基本計画」は、米・英の武器、弾薬は運ばない(首相説明)としたものの、武器を携行した兵士は運べるとするなど、米・英軍の後方支援活動、戦闘への参加を想定したものです。年内にも先遣隊として航空自衛隊を派遣するとしています。自衛隊のイラク派兵に必要な費用は、360億円と報道されています。
 こうしたことは、軍事力の不保持、戦争の放棄をうたった平和憲法に明確に違反するものです。わたしたちは、「教え子を再び戦場に送らない」と誓った教職員として、絶対に許すことはできません。
 基本計画の閣議決定の翌日、12月10日付の社説では、「日本の道誤らせるな」「私たちはこの計画に反対である」(朝日)、「あくまで復興支援のために」「憲法の枠を厳格に守れ・派遣の時期は慎重に・テロへの備え怠るな」(毎日)と、反対や慎重な態度を表明しています  久喜市議会をはじめ、全国各地の自治体の議会が反対の決議をあげ、首長も反対を表明しています。12月10日には、東京で「自衛隊のイラク派兵はやめよ」集会が開催され7000名の人々が参加しました。さいたま市をはじめ全国各地で、昼休みデモなどが行われています。埼高教は、本日、分会代表者会議参加者が「イラク派兵反対、国連憲章をまもれ」とデモ行進を行いました。
 世界各紙は、自衛隊のイラク派兵を次のように報じています。「憲法を一枚の紙にした」(中国・新華社)、「米のいいなりやめよ」(マレーシア・南洋商報)、「日本が事実上まだ戦争が行われているところへ第二次世界大戦後初めて派兵する」(ドイツ・南ドイツ新聞)、「派遣計画は多数の日本人に反対されている。多くの日本人は日本の平和憲法に反するし、テロリストの標的になると確信している」(英・フィナンシャル・タイムス)、「日本は戦後初めて自国兵士を戦争中の国に送る」(ロシア・独立新聞)。と日本のイラク派兵に注目しています。
 イラク戦争への参加国は、36カ国ときわめて少数です。しかも、トルコは派遣を中止し、韓国は増派を渋っています。
 10月にマドリードで開催されたイラク復興支援国会議で表明された資金提供は、必要額の60%でしかありませんでした。しかもその九割は、米、世銀、国際通貨基金と日本です。
 そもそもイラク戦争は、国連憲章に違反する先制攻撃であること、その理由であった大量破壊兵器が未だに見つからないことなど、まったく大義のない戦争です。さらに、国連安保理事会ではフランス、ドイツなどが先頭になって、米・英のイラク占領という事態を強く非難しています。
 アナン国連事務総長は「占領下で国連は政治活動を行うことはできない」(12月10日)と強調しました。占領下のイラクでは、各地でテロが起こり、ヘリが撃墜されるなど、事実上の戦闘状態にあります。イラク特措法のいう「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」(非戦闘地域)は、イラク国内に存在しません。米占領軍司令官は、「戦争状態にある」と証言しています。岡本首相補佐官はイラク調査報告で「テロ活動は増加し」「減少する勢いを見せてない」としています。米軍の犠牲者は、五月以降も増え続けています。米・英以外の国の兵士にも犠牲者が出ています。これらの軍隊の多くは、戦争に直接参加するのではなく、復興支援をしている部隊です。イラク国民の戦争による死亡者は7935人〜9766人(12月6日 イラクボディーカウント)になっています。米・英軍の使用したクラスター爆弾の子爆弾が200万発不発のまま放置されています。
 米・英の軍事占領下でのイラク復興ではテロの発生を防ぐことはできません。国連の枠組みで、イラク人の手による政権を作り上げることがなによりも大切です。この点での日本の支援こそが本当の意味での国際協調です。
 私たちは、次のことを強く要求するものです。
 一、自衛隊派兵を直ちに中止すること
 一、国連の枠組みでのイラク復興に努力すること
 一、憲法九条を守ること

  右決議します。
2003年12月13日
埼玉県高等学校教職員組合第7回分会代表者会議