有事法制に反対する決議


 日本政府は、周辺事態法、テロ対策特措法につづいて、有事法制三法案(武力攻撃事態法、自衛隊法改悪、安全保障会議法改悪)を強行成立させようとしています。この法案は、2度の国会で、国民の反対の前に、継続審議となっていたものです。民主党からの修正(国民の人権保護を付帯的に挿入する)を加えたものの、基本的には何ら変わるものではありません。5月15日に、衆議院で強行採決され、現在、参議院で審議されています。
 テロ対策特措法にもとづいて、自衛隊の給油艦船がアフガニスタンへの米・英の空爆の支援を行っています。さらに、横須賀の米海軍機関誌に、「イラク攻撃の際、自衛隊からの給油を受け、米軍の行動に自衛隊から大きな支援を受けた」と報道されています。テロ対策特措法の範囲を大きく越えて、自衛隊は、イラク戦争の兵站活動をしています。時限立法であるテロ対策特措法の期限が迫っています。この延長も、今国会で企図されています。
 インド洋で、米・英軍に給油活動をしている艦船の修理に、日本の民間人が使われています。家族に知らせることもできずに、修理に向かうことを命令されています。こうした事態が、現在も続いています。
 この有事法制は、アメリカのはじめる戦争に自衛隊が協力しようとするものです。しかも、その協力には、住民も強制的に動員させられます。武力攻撃事態法は、武力攻撃の「恐れがある場合」でも発動するとしています。アメリカのはじめたイラク戦争は、その理由の一つが、イラクが大量破壊兵器を持っているというものでした。このことは、国連憲章の自衛権を行使した戦争に当たらないもので、多くの国々から批判されました。国際法的に、許されるものではありません。また、恐れのある時点から、地方自治体を強制的に動員し、国民の生活を制限し、違反した場合には、罰則を課するものとなっています。戦争は最大の人権侵害です。「恐れのある」ときから、人権侵害が行われます。
 小泉首相は、「備えあれば憂いなし」といいます。アジア諸国は、日本の有事法制に対し、脅威を感じています。むしろ「備えれば憂いとなる」という事態になります。また、「法律がなければ、超法規的に行う」ともいっています。日本国憲法は、政府が行わなければならない(行ってはならない)ことを規定しています。超法規的に、政府が行動を取ることは、絶対に許されることではありません。北朝鮮の核問題、拉致問題などを国民の間に必要以上に宣伝し、有事法制成立の梃子にしようとする事態も進行しています。
 私たちは、「教え子を再び戦場に送るな」と決意した教職員として、有事法制反対の決意を新たにし、有事法制阻止のために奮闘するものです。
右決議します。
2003年5月25日
埼玉県高等学校教職員組合第62回定期大会