大会宣言


 国内外の激動する情勢のなか、私たちは埼高教第62回定期大会を戸田高校を会場に開催しました。
 アメリカは9・11テロ事件を「新しい戦争」といい、アフガニスタンへの報復爆撃からイラク戦争へと、国連憲章の定める戦争禁止を無視した無法を繰り返しています。さらにアメリカは、「悪の枢軸」としたイランや北朝鮮への先制攻撃もほのめかしています。
 ブッシュ大統領は、5月にはいって「イラクの戦闘は終了した」とし、これからは復興にアメリカ軍があたることを強調しています。国連・安保理は、新たな決議「イラク制裁解除決議」をし、アメリカの単独行動を正当化していません。こうした事態の中で、日本政府は、アメリカの先制攻撃戦略を無批判に支持することにとどまらず、イラクの復興支援のために自衛隊を派遣するという「イラク新法」を準備しています。さらに、アメリカのはじめる戦争を日本が支援するための有事法制を今国会で成立させるとしています。
 イラク戦争に反対するとりくみは、戦争がはじまるまえから、世界規模で展開されました。埼高教も連日の集会に参加してきました。4月19日には、埼高教の組合員だけでピース・パレードを行いました。高校生は、3月21日に続いて、5月4日に野外で全国高校生集会を開きました。いずれも史上初めてのことです。「今、世界は無駄な歴史を作っている。戦争の末に残るものは悲しみでしかない」と、高校生は意見表明しています。戦争はいやだという素直な意見を発展させ、平和な世界をつくることへの確信を育てる必要があります。
 教育を取り巻く状況も憂慮すべき事態になっています。
 3月20日、中教審は、教育基本法見直しの答申を行いました。政府は、今国会に教育基本法改悪の法案を提出するとしています。埼高教は、埼教組などとともに、5月18日、県内5駅頭で八時間におよぶリレー・トークを600人の参加で成功させました。また、教育基本法「改正」に反対する個人署名が、全教職員を対象に工夫を凝らしとりくまれ、3800名(5月24日現在)分を集約しています。こうしたとりくみに組合員は確信を持ち、教育基本法改悪反対の世論も急速に高まっています。
 埼玉県教委は、秩父東高校、吉見高校、行田女子高校の廃校(募集停止手続きの完了)を決定しました。さらに、中期再編整備計画を準備しています。私たちはこれまでも、地域とともに廃校に反対するとりくみを行ってきましたが、今後も、学習権保障を軸に、「新校」および「募集停止校」の条件整備や中期再編整備計画への対応のとりくみをすすめていくことが必要です。
 新自由主義的な「教育改革」の攻撃が次々と加えられています。民間人校長、二人教頭制、指導力不足教員研修制度、優秀教員表彰制度、管理職の自己申告制度、10年経験者研修、学校評議員制度、学校評価、英語教員研修などです。障害児学校では、二重学籍の問題が一方的に県から出されました。国の動向を考えると、障害児学校のリストラなど、権利としての障害児教育を後退させる危険性をはらんでいます。行政監査報告は、修学旅行について、下見は削減し、費用を81000円以下とせよなど、教育的効果を全く無視し、財政的なことだけを強調したものになっています。住民監査請求によっておこった定時制の課業日研修、休憩時間の設定の問題は「県民の目」を過剰に意識し、現場での超過勤務が日常的になっている実態を軽視したものになっています。長時間におよぶ過密労働が学校の現場でもおこっているのです。その結果、現職死亡、病気休職者が増えています。
 こうした中で、私たち埼高教の闘いは大きな成果をあげてきました。それは、生徒たちに「教育権」を保障し、保護者・父母との共同で学校づくりをするという教育の条理に立ち、教育条件整備と私たちの生活や労働条件を守ることを統一的にとらえることで闘いをすすめてきたからです。
少人数学級展開は、加配がないという不十分さもありますが、すべての高校、すべての学年で実施が可能になりました。鶴ヶ島市では、「地域とともに歩む開かれた鶴ヶ島高校創造委員会」という、生徒、保護者・父母、地域が参加した五者協議会が設置され、5月17日に第1回委員会が開催されました。教職員、生徒、保護者・父母、地域が協力・共同して、学校づくりをすすめることに確信が生まれています。協力・共同のすすめ方をさらに豊かにする必要があります。
 医療費の国民負担が増え、SARSは健康への不安を、りそな銀行グループの事態は生活への不安をつのらせています。常態化してる不況は、深刻な事態になっています。こうした中で、長時間過密労働が強いられ、働くルールがおかされています。授業料減免者数が激増しています。政府の失政による不況が大きな原因です。高校生の就職難は、改善する方向が見えないまでになっています。官民格差を理由に公務員の賃金を抑制し、それを理由に民間の賃金を抑制するという悪魔のサイクルが進行しています。
 こうした中で、私たち埼高教のとりくみは多様に展開され、数々の成果と教訓を生みだしました。私たちはその成果と教訓に確信を持ち、以下の諸課題に全力でとりくみます。
 一 有事法制反対の運動をさらにすすめます。
 一 イラク戦争を正当化させないとりくみをすすめます。
 一 教育基本法を改悪する法案を提出させないとりくみをすすめます。
 一 参加と共同の学校づくりをすすめます。
 一 働くルールの確立をすすめます。
 一 組織拡大・強化をすすめます。
 右、宣言します。
2003年5月25日
埼玉県高等学校教職員組合第62回定期大会