埼高教第68回定期大会
大会宣言
武器使用制限を緩和した自衛隊が「国益」を守ることを理由にソマリア沖へ派兵されるなど、憲法を蹂躙する事態が進行しています。1年後の改憲手続法の施行をにらんで、憲法審査会規程を制定し、改憲案を審議する憲法審査会を始動させようとする策動も活発になっています。
また、麻生政権は、2011年までに消費税増税を法制化することを閣議決定する一方で、定額給付金や15兆円を超える補正予算などの「ばらまき政策」で国会解散のタイミングを計っており、その露骨な党利党略による政権運営は国民の怒りをかっています。夏季一時金の0.2ヶ月凍結を内容とする人事院勧告、地方のほとんどがこれに追随した人事委員会勧告は、選挙目当ての政府与党の圧力に人事院、人事委員会がみずからの役割を投げ捨てて屈したものに他ならず、民間の賃金決定に重大な影響を与えるものであり断じて容認できません。
しかし、昨年末に日比谷公園で行なわれた「年越し派遣村」以来、さいたま市での「反貧困駆け込み相談会」を含め、多くの地域で生活・労働相談活動が広がっています。「構造改革」と雇用・経済危機のなかで貧困と格差の拡大はいっそう深刻さを増していますが、労働者の使い捨てを許さず、国民の雇用と暮らしを守る国民的なたたかいは大きく前進しています。
アメリカのオバマ大統領は、アメリカ大統領として初めて「核を使用した唯一の保有国としての道義的責任」にふれ、「核のない、平和で安全な世界を米国が追求していくことを明確に宣言する」と述べました。このオバマ演説は、来年開かれるNPT再検討会議に大きな影響を与えるといわれています。唯一の被爆国である日本でも、「核のない、平和で安全な世界」を目指す運動を、国民の生存権と憲法九条を守るたたかいと連動させて、大きく発展させていくことが求められています。
こうした情勢の下、埼高教は第68回定期大会を熊谷西高校で開き、2日間にわたって熱気あふれる討論を行いました。
2010年5月18日の改憲手続法の施行まで1年を切りました。子どもたちとの憲法学習、「憲法出前講座」、「高校・障害児学校教職員『九条の会』」主催の講演会など多様で創意に満ちたとりくみがすすめられています。地域・職場・分会単位での憲法学習会、「九条の会」の結成などを含め、改憲NOの声を大きな世論にしていく運動の前進が求められています。
夏季一時金の0.2ヶ月凍結に対するたたかいのなかで、私たちは秋の賃金確定のたたかいにつながる到達点を勝ちとることができました。民間の労働者と連帯して賃金改善、労働条件改善のとりくみをいっそう強化することとあわせ、現業職員に対する行(二)表適用による賃金の切り下げや民間委託を許さないたたかい、臨時教職員の身分保障のたたかいなどは、専門部だけでなく埼高教全体でとりくまなければならない課題です。
本年度から主幹教諭が導入されましたが、私たちは、民主的な学校運営をいっそう発展させるための原則を県教委と確認しました。各職場でも校長交渉を行い、主幹教諭を梃子に独断的な学校運営を持ち込もうとする管理職に対して毅然として対処するなど、それぞれの学校をより民主的な組織につくりかえていくとりくみがすすめられています。
また、本年度から始まった教員免許更新制は、教員免許の失効、失職をおどしに使って教員の管理と統制をねらったものです。教員免許更新制の廃止、凍結を要求しながら、更新漏れによる失職者を出さないようとりくみを強化することが必要となっています。
私たちは、人事評価と学校自己評価システムを統一的に運用し、とりわけ教育活動を総括するシステムを教職員合意で確立し、子ども、教職員、保護者・父母、地域による「参加と共同の学校づくり」を積極的にすすめてきました。管理職の恣意的な人事評価を許さないためにも、また子どもたちを主権者として育てるためにも重要なとりくみです。
貧困と格差はいっそう拡大し、公私立を問わず授業料滞納者の急増などの深刻な問題を引き起こしています。また、授業料減免基準の改悪、定時制通信制高校での教科書給与・夜食費補助制度の廃止などは高校生の修学権を奪うものとなっています。深刻な雇用・経済危機による内定取り消しなど若者の勤労権の侵害も深刻です。「子どもの貧困」、若者の経済的困難を広く世論に訴え、高校統廃合、定時制通信制教育のリストラを許さず、困難を抱える高校生への経済的支援を要求するとりくみがすすめられています。
障害児学校の校名変更は、障害種別教育の専門性を曖昧にする「特別支援教育」体制への移行の一環です。私たちは、「特別支援教育」が、障害児教育のリストラ・解体となることを許さず、「権利としての障害児教育」を充実、発展させるとりくみをすすめてきました。また、高校に在籍する「特別な手立て」を必要とする生徒に対する「特別ニーズ教育」についての学習を深めてきました。
長年にわたる運動によって1日の労働時間が15分間短縮された積極面を評価しながら、これを実質的なものとさせることが求められています。「総務事務システム」の導入を口実にした事務職員の定数削減をはじめとする教職員定数削減と臨時任用化に対しては、「学校づくり」の観点からのとりくみも必要です。また、職場の衛生委員会を分会のイニシアティブによって機能させ、職場の働くルールの確立、メンタルヘルス不全の起こらない職場づくりを校長に要求していくことも大切なとりくみです。
週30時間を超える授業を容認した新学習指導要領によって、子どもたちの「学力」のいっそうの格差が生じるおそれがあります。「道徳教育」の押しつけを許さず、新学習指導要領の批判的検討を通じて、高校生が身につけるべき「学力」とは何かについての根本的な論議が必要です。
私たちの運動が成果をあげるには、埼高教に結集する教職員を増やすことが決定的に重要です。教職員を分断し孤立させる攻撃が強められている今、教職員の団結を大切に、要求を練り上げその実現に向け共同の運動をすすめていくことが求められています。共同の運動にとりくむことによって仲間がさらに増えていくことは、埼高教運動の重要な教訓です。
埼高教は、本大会で次の運動に積極的にとりくんでいくことを確認しました。
1.平和憲法を守る運動、憲法の理念を生かす民主教育、平和教育を推進します。
1.生存権を保障し、教育を受ける権利を保障する運動を、国民生活の向上を願う民間労働者や青年の運動と連帯しながらすすめます。
1.主幹教諭の導入によっても職場の民主的な運営原則が破壊されないよう校長交渉を強め、教職員の協力、共同によるいきいきした民主的な学校づくりをすすめます。
1.人事評価を梃子にした「競争と管理」の教育に反対し、子ども、保護者・父母、地域による「参加と共同の学校づくり」をすすめます。
1.夏季一時金をめぐるたたかいで勝ちとった到達点を足がかりに、秋の賃金確定闘争にむけて、更なる賃金抑制を許さず、労働条件を改善し、「成果主義」による差別賃金の導入を許さないたたかいを強化します。
1.現業職員の賃金切り下げと民間委託に反対し、教職員の採用制度と臨時教職員の労働条件の改善を求める運動をすすめます。
1.教職員の働くルールを確立するとともに、メンタルヘルス対策を充実し、健康でいきいきとした職場づくりをすすめます。
1.たたかいを前進させるために組合員の拡大に全力で奮闘し、3連続の組合員の純増を目指します。
右、宣言します。
2009年5月24日
埼玉県高等学校教職員組合 第68回定期大会
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