イラクへの武力行使を許さず
国連による平和的解決を求める決議


 「県内一七〇〇〇人 イラク攻撃反対労組組合員ら」(埼玉新聞二月二十一日付一面見出し)。さらに演劇 人一二三人のイラク攻撃反対の声明が出されました。二月十四日には明治公園で、翌十五日には、世界各 地で、イラク攻撃反対、戦争ノーの世論がかつてない盛り上がりを見せました。アメリカの労働者によって結成 された「アメリカ反戦労働」は、「イラク戦争反対国際労働宣言」の賛同を訴えました。これに対してわずか一〇 日あまりで、三三ヵ国二〇〇以上の労働組合(構成員一億三千万人)が賛同を寄せています。イラクへの武 力攻撃を許さない声は、県内外、国内外に大きく広がっています。
 国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)と国連原子力機関(IAEA)による査察結果の報告が国連安保理 に示されました。アメリカやイギリスは、査察の効果がない、イラクは協力をしないとして、武力行使を認める新 たな決議を準備しています。さらに、武力行使の準備をすすめ、イラク周辺に戦力を集中しています。
 イラクは、大量破壊兵器を廃棄し、国際社会に対して、それを証明することが求められています。
 湾岸戦争後の安保理決議で、国連は、イラクに大量破壊兵器の査察を行いました。このときの査察官の一 人スコット・リッターは、「大量破壊兵器の能力は九〇〜九五%まで、検証可能な形で廃棄された」としていま す。査察による廃棄は、十分に効果のあるものです。
 そのうえイラクは経済封鎖で、一五〇万人が死亡し、そのうち六二万人は五歳以下の子どもだといいます。 石油の輸出が禁止され、医薬品の輸入まで止められた結果です。湾岸戦争での劣化ウラン弾によるガン患者 も続出しています。
 二月十八日、十九日の両日開かれた国連安保理の公開会合で、六二カ国が討論に参加しました。「査察は かつてなく効果的であり、強化すべきだ。イラクに自発的に協力するよう求める」(ヨルダン)、「査察は妨害や 硬直的な期限なしに支持され継続しなければならない」」(エジプト)、「先制手段として軍事力の行使をするこ とは、国際法で前例がない」(マレーシア)、「安保理のみが武力行使を決断できる。第二次世界大戦以後に 確立された国際法の秩序が試されている」(エクアドル)と、多くの国々は武力行使に反対しています。こうし た中で、「単に査察を継続、強化しても大量破壊兵器廃棄に結びつかない。新たな安保理決議の採択が望ま しい」とした日本政府の主張は、極めて少数の意見になっています。
 国連は、世界のほとんどすべての国が加盟するという状況になっています。そして、国連憲章では、武力行 使を禁止し、紛争は、安保理で確認したうえで、国連の指揮の下に制圧をするという集団安全保障というシス テムを作っています。このことへの全世界の信頼を高めることが、今後の世界秩序を確立していくうえできわめ て重要なことです。
 アメリカは、このイラク攻撃は、自衛権の行使であるとしています。しかしこれは、国連憲章を踏みにじった、 まったくの詭弁です。自衛権行使の要件は、具体的に武力攻撃を受けた事態がなければなりません。予防的 に自衛権を主張することはあり得ません。しかもその自衛とは、@不当・急迫な攻撃である、A他に解決の手 段がない、B自衛権の行使は必要最小限、が条件になっています。また、安保理が動くまでの間として、きわ めて限定的なものです。
 これらを全く無視したアメリカの態度は、全世界の国連への信頼を無にするものです。さらに、日本が国連の 場で公然とアメリカの代弁者としての態度を取ることは、許されるものではありません。日本国憲法で「平和を 維持し、(略)努めている国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う」とした精神に、真っ向から対立す るものです。
 私たちは、国連憲章と日本国憲法の精神にたって、イラクへの武力行使には絶対に反対します。
右決議する。

二〇〇三年二月二十二日
埼玉県高等学校教職員組合第三〇〇回中央委員会