米・英は直ちに攻撃準備を中止せよ
日本政府は支持の取り消しを(声明)

2003.3.19 埼玉県高等学校教職員組合 中央執行委員会

アメリカがイラク攻撃開始を表明

 ブッシュ大統領は、3月18日午前10時(日本時間)、テレビ演説をおこない、48時間以内に、フセイン大統領とその息子たちが国外に退去することを強く求めるという最後通告を行いました。これは、事実上イラクに対して武力行使することを表明したものです。国連査察団や原子力委員会は、イラクから退去をはじめました。
 一方、イラクのフセイン大統領は、「ブッシュこそ退陣を」と言い、18日夜になって最後通告を拒否しました。このことによって、開戦になることは必至の状況です。

アメリカの目的はフセイン体制の崩壊

 12年前の湾岸戦争の終戦協定で示されたイラクの大量破壊兵器の廃棄を実行させるために、安保理決議1441号で確認し、国連による査察を行ってきました。査察に先立って、イラクから大量の資料(当然軍事機密が含まれる)を提出させ、その検証を行っていました。
 査察委員会のブリックス委員長は、数ヶ月の査察を継続することが必要と報告しています。湾岸戦争後の査察(途中で中止されている)で大量破壊兵器の廃棄に大きな貢献をしていることも報告されています。こうしたなかで、アメリカが査察は限界だとして武力行使をすることは、その目的がイラクのフセイン体制を崩壊させることにあることは明白です。

日本政府は武力行使支持

 日本政府(小泉首相)は、18日午後1時(ブッシュ演説の3時間後)の記者会見で、アメリカの決断は、「苦渋に満ちたやむを得ない決断だ、米国を支持する」と、いち早く支持を表明しました。同時に、武力行使、戦闘行為には、日本は参加しないし、これからも守りたい、とも明言しました(戦後復興に援助したいとも)。閣議にも諮らず、規定方針であるかのような支持表明です。日本の世論は、80%を超えて戦争は支持しない、としているにもかかわらず....。

アメリカの行為は、国際法違反

 アメリカのブッシュ大統領は、イラクはテロ支援国家だとしています。9・11事件から発したアフガニスタンへの空爆でも、アメリカのもくろむテロ実行犯を逮捕することも、テロ組織を壊滅することもできませんでした。タリバン政権から親米政権に移行することは部分的に成功しました。このこと自体が重大な国際法違反になります(国連憲章2条)。
 そのうえに、イラクをテロ支援国家として、さらに政権の交代を武力行使によって成し遂げようとすることは、二重に国際法違反です。きわめて無理があります。
 イラクはテロを支援し大量破壊兵器をもっているから、武力行使は自衛権の行使だとする論理は、国連憲章から成立しません。
 自衛権の行使は、国連憲章51条に規定されています。自衛権行使の要件は、具体的に武力による攻撃があった事実が必要です。予防的な自衛権の行使は違法行為です。

国際法での自衛権の行使は

 たとえ具体的な武力による攻撃があったとしても、自衛権行使には、3つの条件があります。
 一つ目は、その攻撃が急迫不当であることです。この場合、不当であるかをさておいても、急迫でないことは、査察団委員長の発言、数ヶ月の査察で成果は上がるとしたことで明らかです。
 二つ目は、ほかに解決する手段がないことです。具体的な攻撃がないのですから、このことは意味がないのですが、査察によって大量破壊兵器の廃棄をねばり強く行うことは、多くの国や世界の人々が主張していることです。その努力はなされていません。
 三つ目は、反撃を行う場合の攻撃は必要最小限であることです。アメリカとイギリスは、25万人を超える兵力をすでに配備しています。アフガン戦争でも使用しなかった兵器(大量破壊兵器)を開発したとも伝えられています。ノーベル平和賞を受賞したカーター元大統領は「イラクの攻撃を超えてはならない」といいます。これにも大きく違反しています。
 アメリカのイラク攻撃は、すべてにわたって国際法違反です。

アメリカの単独行動主義

 アメリカは、アフガニスタンへの空爆に続いて、イラクの政権交代を迫る攻撃を計画していました。いってみれば、査察をすることは、アメリカにとってどうでも良いことでした。真の目的は、イラクのフセイン政権を倒すことだったのです。
 査察が続けられている最中でも、アメリカとイギリスは、飛行禁止空域(湾岸戦争後、イラクが他国を攻撃しないためにイラクの飛行を禁止した空域、イラクの北と南に帯状に設定されている)で、空爆を繰り返しています。最近では、それが強化されていました。
 これは、明らかに国連憲章の2条に違反する行為です。アメリカの単独行動主義によって世界の平和を脅かすことは絶対に許されることではありません。

世界中で「戦争反対」

 アメリカ、イギリスをはじめ世界各地で数十万、百万の単位で、平和を求め戦争に反対する集会が連日開かれています。戦争が始まる前に、これだけの集会が持たれていることは史上初めてのことです。
 これは、国連にほぼすべての国が参加し、その国連の主導で「戦争ではなく平和的な解決を」という戦争の回避に、世界の人々が確信を持っていることの現われです。その先頭に立ったフランス、ロシアの安保理での態度を支持し、平和的な解決に期待していました。
 この意味でもアメリカの行動やそれを支持する日本政府の態度は、国連の権威を著しく失墜させるものであり、平和を求める世界の人々の思いを裏切ることであり、絶対に許すことはできません。

米・英は戦争行動を中止せよ

 二重三重に、国連憲章をはじめ国際法に違反するイラクへの武力行使は、直ちに中止すべきです。力によって世界秩序を維持することはできません。法と理性によって維持すべきです。国連の努力を踏みにじり、世界史を逆転させることは、絶対にしてはなりません。
 さらに日本政府は、アメリカと共犯者になるべきではありません。ただちに支持を取り消し、戦闘への参加は絶対にしてはなりません。

教職員に訴えます

 教育にたずさわる者として、戦争反対・平和を守れの声をあげるよう、全教職員のみなさんに訴えます。
 大人たちの、平和を求め戦争に反対する声の高まりとともに、高校生たちの今の事態に対する関心、平和を求める気持ちは、急激に広まっています。そして、行動をはじめています。これらを励ます必要があります。
 戦争が始まることによって、世界の努力が無になってしまうという、失望に変わることのないように配慮する必要があります。
 アメリカやイギリス、そして日本政府の態度の批判に終始するだけでは十分ではありません。  いまの事態に対し、正確な資料を提示して理性をもって対処し、高校生自らが平和とそれを支える国際社会、国際機構を学び、法によって世界秩序を維持することへの確信が持てるようにしなければなりません。

【資料】

国連憲章2条(行動の原則)

4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国
の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる
方法によるものも慎まなければならない。(注)「慎む」は、国際法上では「禁止」

国連憲章51条(自衛権)

(略)武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置を
とるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。

抗議先

 小泉首相(首相官邸)FAX 03−8581−3888
ブッシュ大統領(アメリカ大使館)FAX 03−3505−1862