アメリカはイラクから即時撤退せよ
新しい国づくりはイラク国民の手で(決議)


 アメリカ・イギリスは、圧倒的な軍事力でイラク全土を支配下に置き、フセイン政権を崩壊させました。さらに、戦争は終結していないとし、戦闘を継続しています。一方、アメリカ主導の新政権のために、「イラク暫定統治機構」を発足させようとしています。
 三月二〇日に、アメリカ・イギリスの軍隊は、イラクへの武力攻撃を開始し、バンカーバスター、デージーカッター、クラスター爆弾、トマホーク巡航ミサイルなどの「大量破壊兵器」を使い、街を破壊しました。地上軍は、戦車を使って武力攻撃を繰り返し、イラク軍・政府の要地バグダッド、ティクリットなどを陥落させました。
 この間、子どもたちを含む数多くの犠牲者がでています。「深夜に自宅が爆撃され、父と妊娠五ヶ月だった母、兄弟など家族一〇人の命が一瞬のうちに奪われ、たった一人残されたアバス君は、両腕を失いました」と報道されています。
 イラク各地でライフラインは破壊され、食料、飲料水が不足しています。医療機関が破壊され、薬、水が不足し、十分な手当も受けられず、死者が増加するという事態になっています。空爆など大規模な戦闘は終了したとはいえ、さらに犠牲者は増えることが予想されます。
 この戦争で、アメリカ・イギリスは二重三重に国際法に違反しています。国連憲章は、武力の行使、武力の威嚇を禁止しています。例外的に二つの場合だけ認めています。その一つは、武力攻撃に対して安保理のもとで集団的に対処する(四二条)場合です。二つ目は、武力攻撃を受けた時の自衛(五一条)の場合です。しかも、自衛戦争の要件として、@武力攻撃が急迫不正である、A武力攻撃を排除するために他に手だてがない、B自衛の攻撃が必要最小限である、が必要です。さらに、国連憲章は、内政不干渉を原則にしています。
 アメリカ・イギリスの武力行使は、これらすべてに違反するものです。
 イラクが大量破壊兵器を持っている、イラクはテロ支援国家である、フセイン大統領は恐怖政治をしいている、イラン国民を解放する、民間人の被害は最小限にする、復興支援を行う、などとどんな詭弁を労しても、アメリカ・イギリスの武力行使は正当化できるものではありません。一九一カ国(国連加盟国)中四六カ国が支持を表明したとされますが、きわめて少数です。しかも、支持を表明した国でも、国内世論は戦争反対が多数を占めています。ブッシュ大統領の「国際的に支持された」というのは、まやかしです。
 アメリカは、イラクで行った先制攻撃をシリア、イラン、北朝鮮へ拡大をしようとしています。このことは絶対許せるものではありません。
 破壊された街バグダッドで、反米デモの様子が報道されています。「混乱を招いたのは、アメリカ」「イラクは、イラク国民の手で」がその主張です。まったく当然のことです。国連が中心となってイラクの復興をしなければなりません。アメリカが中心となって、アメリカの企業が復興事業を請け負うということは国際的に許されるはずがありません。
 戦争の始まる前から、国際的反戦の運動、行動は昼夜を分かたず展開されました。世界史上初めてのことです。さらに国連安保理では、非同盟諸国の要求で、公開討論が三回も開催されました。国連史上初めてのことです。公正な世界秩序(平和を守り、戦争を止める)を維持するには、法による支配が必要であることが国際世論になりました。
 この戦争に、高校生は大きな関心を示しました。世界中の高校生が「ノー・ウオー」と声を上げました。高校生たちが現実の世界を見るとき、「やっぱり力の支配だ」「戦争は止められない」と、一面的にとらえることなく、世論、世界的な平和への努力や合意に信頼をよせられるようにする必要があります。私たち教師は、高校生たちが国連への信頼を深め、法による世界秩序の維持に確信を持てるように援助しようではありませんか。
アメリカ政府、日本政府に次のことを要求します。

一、アメリカ政府は、直ちにイラクから撤退すること。
一、イラクの復興は国連主導で行い、新しい国づくりはイラク国民の手で行うこと。
一、アメリカ政府は、他の国への先制攻撃政策を中止すること。
一、日本政府は、アメリカへの追従をやめ、アメリカの戦争政策に反対すること。
一、戦争に参加することを可能にする有事法制三法案の提案を撤回すること。

右決議します。

二〇〇三年四月十九日
埼玉県高等学校教職員組合第一回分会代表者会議